パリコレデザイナー 田山 淳朗 トレンド情報 「A.T」「ATSURO TAYAMA」をプロデュースする田山淳朗氏を、定期的にインタビュー。第1回目の今回は、気になる2008年春夏のトレンドを大解剖。さらに、デザイナーをはじめとする業界人への具体的なアドバイスも。アツロウファンやファッション業界のみなさんはもちろん、おしゃれに興味のある全ての人が気になる情報を(無礼講で!)聞き出しました。 田山淳朗 Profile

田山淳朗 Profileclose

  • 1955年、1月30日生まれ。
  • 1975年、文化服装学院卒業。第14回ハイファッション ピエール・カルダン賞受賞。株式会社ワイズ入社。
  • 1978年に渡仏し、帰国した1982年、株式会社エー・ティーを設立。
  • 1986年、第10回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。
  • 1989年、A.T FRANCE s.a.を設立。
  • 1990年から95年まで、フランス キャシャレル社のレディースデザイナーを務める。
  • 1991年、パリ プレタポルテコレクションにて「ATSURO TAYAMA」発表。
  • 1997年、第40回日本ファッション・エディターズ・クラブ賞、デザイナー賞受賞。
  • 1992年から2005年まで、株式会社ワールドにて「O・Z・O・C」「INDIVI」「BOYCOTT」「VOICE MAIL」「COUP DE CHANCE」のクリエイティブディレクターを務める。
    学校制服やユニフォームも数多く手がけ、最近ではANAグループの新ユニフォーム(2005年)を担当した。現在はクロスプラス株式会社の顧問も務めている。

来春夏のトレンド情報を、デザイナーのあるべき姿勢について、田山 淳朗が答える。

01 2008年春夏は 「モダン・エスニック」

Q01 2008年春夏のトレンドは?

大きなテーマは「モダン・エスニック」。単なるエスニックではなく、都会で着るためのエスニックファッションです。エスニック、つまり民族的な感じをモダンに、快適にしていこうと考えています。
それとカラーですね。色をふんだんに使っていきたい。カラーというテーマは、この春夏から続くものですが、2008年はエスニックという大テーマとリンクして、土の感じ、ナチュラルな感じを強調していきます。
たとえば、明るい黄色からからし色へ。真っ赤からトマトみたいな色や赤土の色へ。ビビッドなグリーンから温もりのある緑色へと変わります。
スタイル的には、ルーズとフィットネスを競演、両立させたフォルムになるでしょう。ボリュームとフィットネス。その組み合わせ方が2008年春夏の重要なポイントであり、おもしろいところです。
ルーズなワンピース、あるいはルーズなシャツやルーズなチュニックに細身のパンツを合わせる。また逆に、小さめのジャケットの下にダイナミックなパンツを合わせるなど、ルーズ×ルーズ、細い×細いではなく、ルーズ×フィットによって多彩なシルエットを提案していきます。

Q02 注目している素材は?

個人的にもそうですが、社会全体が天然素材志向になってきていると思います。
ナチュラルやエコロジー、あるいはロハス的な生き方というものに注目が集まり、大きな意味ではトレンドとも言えるでしょう。
20‐30年前とは逆に、今ではナチュラル素材=高級素材というイメージが定着し、消費者ニーズにもつながっているんですね。
とはいえ、科学的な素材、合成繊維を排除するつもりはありません。エスニックと都会、ルーズとフィットと同じく、相反するもの異なるものを両立することで、より魅力的なものを生み出せると思っています。
以前は、ナチュラル素材と科学的な素材の組み合わせはあまりなかったのですが、今は珍しくない。ナチュラル素材とポリエステル、ナイロン、形状記憶など何でもOKです。選択肢や自由度が増すと、より楽しくなりますよね。
シーズンで分けると、春は合成繊維より、夏はナチュラル素材よりのものになるのではないでしょうか。

Q03 テクニック、ディテールは?

手仕事の風合いを強調することになるでしょう。具体的にはシャーリング、刺繍などが多くなります

Q04 シルエットは?

ナチュラルなシルエットが主流です。モダンというと、カッティングを駆使したきれいなボディコンシャス、構築的なシルエットを想像しますが、あくまでもエスニックですから。

Q05 スーツにも「モダン・エスニック」のテイストが入りますか?

スーツは黒ではなく茶色がメインになります。黒は人工的、茶色はナチュラルですから。とてもキレイな茶色がたくさん出てきます。

Q06 2008年はパンツとスカートのどちらに注目しますか?

「両方です」というのが正解でしょう。
ちょっと大げさですが、パンツはなぜ存在するのか? スカートはなぜ存在するのか? つまり、パンツとスカートでは、その役割、存在理由が異なります。
まず、パンツはコーディネイトアイテムとしての役割がいちばん大きい。その最たるものがスパッツやレギンスですね。このパンツを見てくださいという流行があるわけではありません。単体の存在感を楽しむというより、ワンピースやミニスカート、チュニックなどとの組み合わ せで見せるものなんです。
一方、スカートはプリント柄だったり、素材感だったり、ボリュームだったり、それ自体の存在感を見せるもの。だから両方。両方が競合するのではなく両立するんですね。

Q07 アクセサリーの傾向は?

ナチュラルな素材に金の箔を貼ったり、金のコーティングをして、それをまた洗って使うとか。たとえ金や銀でも、ゴージャス感が全面に出るものではなく、ナチュラルな雰囲気をもつものになるでしょう。

02エスニックとは? デザインとは?

Q01

たとえばエスニックを打ち出すために、デザイナーは何を勉強すればよいでしょう。

エスニック=民族ですから、それぞれの地域のことを知ることが大切ですね。アフリカ、南米、北アメリカ、アジア、中国、インドネシア、東南アジア、バリ島、中近東、東ヨーロッパ。アイルランドのフィッシャーマンセーターとか、イギリスのタータンチェックとか。それらを、まずは整理整頓することですね。自分の思うエスニックな雰囲気を元にデザインするのではなく、エスニックとは何かをちゃんと勉強して掴んでおかないと。
たとえば、「ペイズリー」という柄。日本ではおたまじゃくし柄と言っていましたが、ペイズリーというのは英語で、フランス語ではカシミールと言います。そう、ペイズリーとはインド、パキスタン、中国にまたがるカシミール地方のことなんですね。
こうしたルーツ、背景を理解しておくこともデザイナーとして重要なことだと思いますよ。

Q02 どの地域をピックアップしてもいいのでしょうか?

どこでもいいです。自分がそれを来年の春夏っぽく、ちゃんと表現する力量と覚悟と自信があればどこでもいい。でも「その中でもどこなのか?」ということを知っておくことが大前提です。
わかりやすいエスニックで、マスになりやすいのは中近東です。みんなが知っていますからね。たとえば、僕が急に誰も知らない地域のものを持ってきても、誰もそれをエスニックだと認めてくれない。買ってもらえないでしょう。マスにアピールするなら、有名なエスニックを持ってきたほうがいいわけです。ただ、有名なエスニックというのは新鮮味がない。うまく料理する必要があるわけです。つまり、新鮮な色使い、新鮮な素材使いですね。

Vol.2につづく

Vol.2では、田山淳朗氏に「流行の法則」や「一流のマーケティングのために必要なこと」などを質問する予定。
今回よりもさらに突っ込んで、田山流の視点を探ります。お楽しみに!